日経平均株価(日経225)では、定期的に構成銘柄の入れ替えが行われます。
新しく採用された銘柄には、日経平均に連動する運用資金による買い需要が発生し、除外銘柄には売り需要が発生すると考えられます。
そう聞くと、
「採用銘柄を発表後に買えば上がるのでは?」
「除外銘柄を空売りすれば利益になるのでは?」
と考えたくなります。
私自身、以前から日経225の銘柄入れ替えによる需給には興味がありました。
現在はPythonを使って日本株の自動売買システムを開発しており、株価データの取得やバックテストができる環境も整ってきています。
そこで今回は、その仕組みを使って、
日経225の定期入れ替えには、本当に売買に利用できる株価の偏りがあるのか
を検証してみました。
先に結論を書くと、
単純な「採用銘柄を買う・除外銘柄を空売りする」という方法には、安定した利益傾向は確認できませんでした。
ただし、値動きを詳しく分解すると、いくつか興味深い動きも確認できました。
今回検証した条件
対象にしたのは、2023年秋から2026年春までに完了した日経225の定期見直しです。
企業再編などによる臨時入れ替えは除外しました。
対象は、
- 定期見直し:6回
- 採用銘柄:12銘柄
- 除外銘柄:12銘柄
- 合計:24銘柄
です。
現在の制度に近い期間を確認したかったため、今回は古い時代まで無理にさかのぼらず、2023年秋以降に限定しています。
まずは単純な売買ルールを検証
最初はできるだけ単純なルールにしました。
採用銘柄
発表翌営業日の始値で買います。
除外銘柄
発表翌営業日の始値で空売りします。
売却・買い戻しのタイミングは、
- 5営業日後
- 10営業日後
- 入れ替え実施前営業日
- 入れ替え実施日
の4パターンを比較しました。
発表日の終値では売買できないため、実際に発表を確認してから注文できる翌営業日の始値を使っています。
採用銘柄を翌朝買っても利益にはならなかった
まず採用された12銘柄です。
| 売却時点 | 勝率 | 平均リターン | 中央値 |
|---|---|---|---|
| 5営業日後 | 25.0% | -2.73% | -3.89% |
| 10営業日後 | 33.3% | -1.05% | -2.82% |
| 実施前営業日 | 50.0% | -0.43% | +0.55% |
| 実施日 | 58.3% | -0.22% | +1.52% |
予想に反して、平均リターンはすべてマイナスでした。
保有期間を長くすると勝率は改善していますが、
「採用が発表されたら翌朝買えばいい」
というほど単純ではありませんでした。
除外銘柄の空売りはさらに悪かった
次に、除外された12銘柄を発表翌営業日の始値で空売りしました。
| 買い戻し時点 | 勝率 | 平均リターン | 中央値 |
|---|---|---|---|
| 5営業日後 | 25.0% | -3.98% | -3.95% |
| 10営業日後 | 25.0% | -2.84% | -3.75% |
| 実施前営業日 | 16.7% | -2.80% | -2.92% |
| 実施日 | 16.7% | -3.97% | -4.82% |
こちらはかなりはっきりしています。
除外された銘柄を空売りする戦略は、今回の期間では全パターンでマイナスでした。
つまり、
「指数から外れる」
=
「その後株価が下がる」
とは限りません。
なぜ採用銘柄を買っても利益にならなかったのか
ここで疑問が出ました。
日経225への採用には買い需要があるはずなのに、なぜ発表翌朝から買っても利益にならないのでしょうか。
そこで次に、
株価がいつ動いているのか
を分解して調べました。
採用銘柄は発表翌朝にすでに上がっていた
採用銘柄について、
発表前営業日の終値から発表翌営業日の始値までの値動きを確認しました。
結果は、
- 平均ギャップ:+2.23%
- 日経平均控除後:+2.62%
- プラスだった銘柄:75%
でした。
今回の分析の中では、かなり方向が揃った結果です。
つまり、
採用銘柄で確認された上昇のかなりの部分が、発表後から翌朝の寄り付きまでに発生していた可能性があります。
今回対象にした定期見直しは大引け後に発表されていました。そのため、発表を確認してから現物株を売買できる最初のタイミングは翌営業日の寄り付きです。今回、その時点ですでに採用銘柄は平均+2.23%ギャップアップしていました。
これが、単純な「発表翌朝買い」の成績が良くなかった理由の一つと考えられます。
採用後は一度下がり、実施直前に戻っていた
さらに発表翌朝からの値動きを確認しました。
日経平均を差し引いた平均リターンは、
- 5営業日後:-1.78%
- 10営業日後:-1.13%
- 実施前営業日:+0.82%
でした。
採用銘柄は、
発表直後から素直に上昇し続けたわけではありません。
むしろ前半は下落し、その後、入れ替え実施日に近づくにつれて回復しています。
実施前営業日の+0.82%も、採用発表直後から積み上がった利益ではなく、途中の下落から戻した結果でした。

一番意外だったのは除外銘柄
今回もっとも予想と違ったのが、除外銘柄です。
除外された銘柄の通常方向の株価リターンを見ると、
- 発表翌日:+1.58%
- 5営業日後:+3.98%
- 10営業日後:+2.84%
- 実施前営業日:+2.80%
- 実施日:+3.97%
となりました。
つまり、
除外されたにもかかわらず、実施日まで株価は平均的に上昇していました。
これが、最初に行った「除外銘柄を空売りする戦略」が悪かった直接的な理由です。

除外銘柄は実施後に下落した
さらに興味深かったのが、入れ替え実施後です。
除外銘柄の実施日終値からの平均リターンは、
| 期間 | 平均リターン | 中央値 |
|---|---|---|
| 翌営業日 | -1.91% | -1.84% |
| 5営業日後 | -1.55% | -1.81% |
| 10営業日後 | -1.25% | -2.42% |
となりました。
今回の12銘柄では、
発表後に上昇 → 入れ替え実施後に下落
という動きが確認されました。
当初は、
「除外発表による売り需要で下落する」
と考えていましたが、実際には逆でした。
なぜこのような動きになったのかは、株価データだけでは断定できません。
事前の織り込み、買い戻し、悪材料出尽くし、リバランス需給など複数の要因が考えられます。
採用銘柄も実施翌日は弱かった
採用銘柄についても、実施翌日は平均-2.04%でした。
12銘柄中10銘柄が下落しています。
一方で、5日後・10日後になると一部銘柄の大幅上昇の影響が大きくなり、平均値だけでは評価しにくくなりました。
そのため、
採用銘柄は実施翌日に弱い傾向が見えた
ところまでは確認できますが、
「その後も継続して下落する」
とは今回の結果だけでは言えません。
今回見えた3つの特徴
今回の24銘柄を整理すると、特に目立ったのは次の3点でした。
1. 採用銘柄は発表翌朝にギャップアップ
日経平均控除後で平均+2.62%。
発表を見てから翌朝買う頃には、かなり株価に反映されていました。
2. 除外銘柄は発表後に下がらなかった
むしろ実施日まで平均約4%上昇しました。
そのため、単純な除外空売りは悪い成績になりました。
3. 実施後は採用・除外とも翌日に弱かった
採用銘柄は平均-2.04%。
除外銘柄は平均-1.91%。
入れ替え実施による需給イベントが終わった後に、反対方向へ動いた可能性があります。
ただし「必勝法が見つかった」わけではない
ここは重要です。
今回の対象は、
- 採用12銘柄
- 除外12銘柄
- 定期見直し6回
しかありません。
また、結果には個別銘柄の影響もあります。
たとえば実施後のリターンでは、キオクシアHDやソシオネクストなど一部の大きな値動きが平均値に強く影響しました。
そのため、
「日経225採用株には必ずこの法則がある」
と結論付けることはできません。
今回確認できたのは、
単純な採用買い・除外空売りには優位性が見られなかった一方で、イベントの前後には局所的な株価の偏りが存在する可能性があった
というところまでです。
売買コストもまだ入れていない
今回の検証では、
- 手数料
- スリッページ
- 貸株料
- 逆日歩
- 空売り在庫
などは考慮していません。
特に除外銘柄の空売りについては、これらを加えると実際の運用成績はさらに悪化する可能性があります。
自動売買ツールの開発環境を手動投資にも使える
今回もう一つ確認できたのは、
自動売買システムのために作ってきた分析環境を、普段の投資アイデアの検証にも使える
ということです。
これまでは売買ルールそのもののバックテストに使ってきましたが、
「このイベントには本当に株価の偏りがあるのか?」
という疑問も、過去データを使って数字で確認できるようになりました。
思いついた投資法を感覚だけで判断せず、まず過去データで確認する。
こうした使い方も、今後増やしていきたいと思っています。
次は「引けに集中する大口売買」を調べたい
今回の日経225入れ替えを調べていて、次に気になったのが指数リバランス日の大引けです。
日本株を見ていると、特定の日だけ15時30分の出来高が異常に増える銘柄があります。
日経225だけでなく、
- TOPIX
- MSCI
- FTSE
などの指数に連動する資金がリバランスを行う場合、機械的な売買が引けに集中することがあります。
そこで次は、
「指数リバランス日の15時30分に発生した大きな需給は、翌営業日に反転するのか?」
を検証してみたいと考えています。
日足だけでは確認できないため、次は1分足や5分足など、より細かいデータも必要になりそうです。
まとめ
日経225の定期入れ替え24銘柄を検証した結果、
採用銘柄を発表翌日に買い、除外銘柄を空売りするだけでは安定した利益にはなりませんでした。
一方で、
- 採用銘柄は発表翌朝に平均+2%超のギャップアップ
- 除外銘柄は発表後にむしろ上昇
- 入れ替え実施後は両方とも翌日に弱い
という興味深い動きも確認できました。
今回の結果だけで売買ルールにすることはできません。
ただ、
「指数入れ替えに伴う機械的な需給が、株価のどこに現れるのか」
というテーマには、もう少し調べる価値がありそうです。
次は、実際に引けで出来高が急増するリバランスイベントを対象に検証してみます。



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